極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

「えっ? それは、どういう……」

「西日本エリアの話ですよ。元の木阿弥にされては堪らないからね。専務には以前からお時間をいただけないかとお願いしていたでしょう。やっと今日お会いできると聞いて安心しました。本当にお忙しい方だ、倉野さんも大変でしょう」


話が見えない、けど、朝比奈さんは専務を交えてのつもりだった?
そういう意味に聞こえる。


あれ?
でも朝比奈さんは倉野さんと会うとしか、私にも言ってなかったはずだけれど。


混乱しながら伊崎と目を合わせるが、きっと私たち以上に混乱しているのは倉野さんではないのだろうか。


「え、ええ。今日も専務は取引先と会食に出ておられて……」

「会食? でしたら今夜はお会いできないということですか」

「いえ! 会食の後でしたらきっと……すぐに連絡を」

「会食の最中に携帯を鳴らしてはご迷惑だ、それなら後日でも良かったのに」

 
しどろもどろになる倉野さんに、朝比奈さんは心底不思議そうに尋ねたけれど、こっちから見るにその表情はとても白々しい。
その顔で、わかってしまって私は顔をぎゅうっと顰める。


真後ろから見える倉野さんの髪の間から覗く耳が、みるみると真赤に染まっていった。


「も……申し訳ありません、私、仕事ではなくお誘いされたものと勘違いを」


さっきまでは、あんなに舞い上がって自分の気持ちを彼に伝えたいという意思がずっと見え隠れしていたのに、今は消え入りそうなほどにか細い声でそう答えた。


対して、聞こえたのは朝比奈さんの含み笑いの混じった声だ。

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