極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

*****

事の名残で気怠い身体を、彼が背中から抱きしめながら大阪でのことをぽつりぽつりと話してくれた。


あまり話したがらなかったけれど、私が聞きたいと言ったのだ。
知った方が安心できるから、と言った。


聞いた話は思っていた以上に、厳しいものだった。


緩み切った規律と馴れ合い、長く続いた営業不振に大阪や神戸に本社を置く他メーカーに百貨店や商業施設のプロパーも軒並み奪われ、激減した店舗数。


それらを正し、巻き返すため休みもなく働いて毎日仕事で頭の中が埋め尽くされた。
出来なければ、やがて関東エリアも引き摺られ会社が傾く。


そうなれば、よくて工場閉鎖などの縮小、悪くて破綻の可能性もあったという。
聞いているうちに、私はまた涙が止まらなくなった。


「……ごめんなさい、私、何も知らなかった」

「泣かせたくて話したんじゃないよ」

「だって」


苦しい。
私、何も知らないで、察することもできないで。
なんて、私は幼かったんだろう。


そんな私の後悔を、ふ、と背中で苦く笑う気配がした。


「ここにちゃんと、僕の居場所を置いてくれていた」


彼の手が、指輪を挟んで包み込むようにして私の胸元に置かれた。


ありがとう、と耳元で囁かれ、私は彼の手に自分の手を重ねると顔だけ後ろへ振り向かせる。
覗き込んだ彼の瞳が優しく細められ、唇で涙を拭ってくれた。

< 176 / 237 >

この作品をシェア

pagetop