極上スイートオフィス 御曹司の独占愛


それから唇へと移ったキスは、再び情交を匂わせる濃厚なものだ。
同時に、彼の手が余韻を残した私の肌に甘い痺れを呼び起こした。


「ん……っ、あの……朝比奈さん?」

「ん。ごめんね、今夜はちょっと治まりそうにない」


そう囁かれれば容易く身体は熱を思い出して潤い始める。
私は彼の腕の中でくるりと寝返り正面からキスを強請り、眠れぬ夜を覚悟した。


今ならわかる。


私たちの三年は、必然の後悔だった。


全部捨てて傍にいれば
泣いて喚いて、すがりついていれば


それなりの未来もあっただろうか。
どうなっていたかは誰もわからない。


だけど、離れた月日の分だけ寂しさを募らせた、後悔を乗り越えた末の
今のこの愛しさは、きっとなかった。


今の私たちは、きっとなかった。


「……朝比奈さん、好き」


高め合う熱に溺れ、何度言葉にしただろう。
何度でも伝えたかった。


それでも足りなくて、溢れる気持ちをどれだけ伝えてもまだ足りなくて。


「好きだよ」


耳元に唇が触れた。
低く微かな囁きが、吐息と共に耳の中へ吹き込まれる。


「好きだ、真帆」


きゅう、と身体の奥が切なく鳴いて、彼を呼んだ。求めた。


もう、二度と手を離さないでと願う。
私も逃げない。


今度は私、強くなるから。


一度は失うことを知ったから
だからきっと、強くなる。

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