極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
それなのに、初日の面談の後から、ちょいちょいこうやって変に絡みに来る。
かといって仕事の話の時はちゃんと仕事の顔をするから、こっちはこっちで切り替えが大変だ。
「と、とにかくもう行かなきゃなので、ありがとうございました」
「どういたしまして」
「……って、離してくださいよ」
書類の端を互いに持ったまま、彼が離してくれないのでピンと張った状態になっている。
これ以上無理に引いたら破れそうで、恨めしく彼を睨んだら首を傾げて笑っていた。
「からかわないでくださいっ」
「からかってないよ」
いやいや絶対からかってるよね!
こうして私の反応を楽しんでいるようにしか見えない。
事実すっごく楽しそう。
「吉住が、返事してくれたら離すよ」
「は? 返事って、何を……」
「今夜はゆっくり話せるよね?」
意味がわからず尋ねた私に、彼はもう一度さっきの言葉を繰り返した。
「……そうですね。みんな、朝比奈さんと話せるの楽しみにしてると思います」
「約束」
会話の主旨を、少しずらした。
けど、彼はそれを無視した。
早く離して欲しい、こんな通路でいつまでも話してて、誰かに変に思われたくない。
私が言葉に詰まった時、またしても絶妙なタイミングでレスキューが到着した。
「吉住! そろそろいかねーと時間ないぞ!」
伊崎の声がして慌てて振り向けば、不機嫌そうに眉根を寄せてこっちを睨んで立っている。
同時に、手に持った書類からするりと抵抗感が消えた。
朝比奈さんが、手を離したのだ。