極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

別れて三年、引きずっているわけじゃない。


新しい恋だって、いずれしたいなとは思っている。
ただ、別れた後の寂しさを誤魔化すためにひたすら仕事に没頭したら、それが結構、楽しくなった。


私の勤める会社は、大手の洋菓子メーカーで、昔からあるブランドから新しく若者向けを狙ったブランドまで幅広く展開し、全国に数千を超える店舗を持っている。
自分の担当エリア内にある店舗ごとに、催事の企画、販売員の管理など各店舗の店長と連絡を取りながら売上の向上を図るのが、私たちエリアマネージャーの仕事だ。新規店舗の開拓などもそれに含まれる。


基本日曜祝日は休みだが、店舗は当然開店するので何かと仕事ができて休日出勤になることも多い。
特に催事やギフトのシーズンになると、『日曜? 祝日? なんの話?』って感じだ。


三月の下旬の今頃はバレンタイン、ホワイトデーのシーズンを過ぎ比較的落ち着いた頃で、明日からの土日は久しぶりに連休が取れそうだった。


出勤してすぐ、外回りの準備をしていると若干ダレた口調で声をかけてくる男がいる。
同期で同じエリアマネージャーの伊崎だ。


「はよー、吉住。朝から忙しそうじゃん」

「はよ。忙しいの! 東武に商品届けて上げなきゃいけなくて」


昨夜、東武百貨店に入っている店舗の販売員から連絡があり、大口注文で不足の商品があるという。
朝一番に必要だということで、追加発注したのとは別に私が先に最低限必要な分だけ届けることにしていた。


デスクの上に、ジュレのギフトセットが十個入った段ボールがひとつ。
留めてあったテープを一息に引き剥がして、中身を出していく。


電車での移動なので、箱で持ち出すのは辛い。
大型のショップバッグに詰めれるだけ詰めてふたつ、両手に提げていくことにしたのだ。


「うっわ。お前これ、マジでもってくの?」

「持ってくよ。午後の便じゃ間に合わないし、店舗周りのついでだから」

「無理だろ水物商品だぞ」


水物。
ジュレなんかの詰め合わせギフトは、結構重い。


これがクッキーとかならまだマシなんだけど。

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