極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「ありません。カナちゃん……西口さんと約束してるんです」

「僕と約束したのに」

「してません。お話なら、ここでも出来るじゃないですか」


ここでなら、無難な話しかできまい、とそう高を括って言ったのだが。
彼の次の発言に、ぎょっとする。


「してもいいならするけど。僕は全然構わない」

「えっ?」


狼狽える私の耳元に、彼が少しだけ顔を近づけて、小さな声で囁く。


「元々、隠したがってたのは君だけだろ」


いくらなんでもこの距離感はまずいと、ばっと背を反らせ距離を取る。
こんなとこで、冗談やめてください、と言い返そうとした時だ。


「すみません、お邪魔しまーす……あー! 朝比奈さん! お久しぶりですー!」


襖を開けてひょっこり顔を出したのはカナちゃんだ。
あやしくなりかけていた空気を霧散させ、賑やかな明るい声にほっとした。
中々来ないので、閉店作業に時間がかかっているのかとヒヤヒヤしていたが、これで、帰る口実に出来る。


「きゃー!三年経っても相変わらずカッコいい!」

「はいはい。そのノリ、西口も変わらないね。仕事も順調のようだし。売上は伸び悩んでるみたいだけど」

「げ。もうチェック済みですか……」


ぐいぐいとカナちゃんが乗り込んで来てくれて、一気に会話のペースを持っていってくれる。
しかも私と朝比奈さんの間に座ってくれたのだ。


カナちゃん、全く気づいてはいないけどナイスレスキューである。



「西口。なにか飲む?」

「いえいえ、会費払ってないんで、ほんとに朝比奈さん見に来ただけです。このあと真帆とご飯行くので!」



カナちゃんの勢いに甘えて、私の方はほっと緊張をほどいた。


「カナちゃんごめん、ちょっと御手洗い」



そう言いながら席を立つと、朝比奈さんにもすみませんと会釈をした。


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