極上スイートオフィス 御曹司の独占愛


個室居酒屋の一室で、私はカナちゃんを待っていた。
部屋の入口で靴を脱いで、テーブルの下は掘りごたつ式になっているので、足のばせるから楽でいい。


私も外回りすることが多いしカナちゃんは一日中立ち仕事だし、こうやって足をくつろげることができるこのお店はふたりのお気に入りだ。


「カナちゃんまだかな?」


あの後、少ししてから歓迎会はお開きになったのだが、それより前にカナちゃんは「お邪魔しました! 真帆、また後でね」と場を去ってしまった。


一緒に行けばいいのに、と思ったのだけど、やっぱり呼ばれてないのにいつまでも留まることに気が引けたのだろうかと、呼び止めることはやめた。


その後ほどなくして解散になり、私はひとり抜け出して今に至る。
何か連絡が入っていないかとスマホを確認したが、最後のメッセージ以降連絡は入っていない。


『いつもの店予約してあるよー!』


というメッセージだったからこの店に来て、来てみれば確かにカナちゃんの名前で席を取ってあったので先に入らせてもらっていた。


どちらかといえば先に来ていてもいいはずなのに、遅すぎる。


こちらから連絡してみようか、と入力画面に指で触れた時だ、やっと引き戸が開いた。
店員には、連れが来たら注文します、と言ってあったので、当然カナちゃんだと思った。


「カナちゃん、おそ……」


顔を上げて、私はさぞ間抜け面で固まっていたことだろう。
だって驚きすぎて表情筋が動かない。


そこにいたのは、店員でもカナちゃんでもなかった。

< 49 / 237 >

この作品をシェア

pagetop