いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
「知らないですよ。君には僕は必要ないんだろうって一方的に言われたんです。だからこの話はもうおしまい!はいっ、仕事しましょ」

「おしまいって、そんな‥‥。でもまぁ、柏木ちゃんは押され負けて付き合ったようなもんだもんね。傷は浅い、か」

さっさと話を打ち切って書類を手に取る私にため息をつきながら呟く梨花さんの声が聞こえたけれど、聞こえてないフリをした。

「たとえ好きで付き合ったわけじゃなくても、数ヶ月密に過ごせば情くらい湧くんですよ、梨花さん」って言葉も飲み込んで。


⌘ ⌘ ⌘


彼と付き合ったのは、たったの三ヶ月。その半年前に仕事関係で出会って、直後からガンガン口説かれて。考えてみたら、出会ってから別れるまで一年も経っていない。

その短さで一体どれだけ私の事を分かってくれたのかと正直腹も立つけれど、言われたセリフが歴代の彼氏とほぼ同じな辺り、それなりに理解はしていたのかもしれない。

「ま、みんな似たような付き合いはじめだったからね」

トントンと書類を揃える音に紛れさせて、愚痴を漏らす。
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