春になったら君に会いたい


「これ、落し物か?」

女の子とぶつかる、という突然の出来事で少し動揺していた俺は、床にハンドタオルが落ちているのを見つけた。落ちている場所から考えて、さっきの子のものだろう。

拾って見てみると、ピンク地に白のドット柄という可愛らしいものだった。俺には興味が無いが、女の子というのは大体こういう柄が好きみたいだ。中学の時のクラスの女子たちもこんな感じの柄のタオルを持っていた。

タグを見ると、「のぞみ」と書いてある。それが彼女の名前だということはすぐに分かった。



少し考えて、俺はこのタオルを届けよう、という気持ちになった。

偶然とはいえ、拾ってしまったものを床に置き直すのは気が引けるからだ。



……なんてそんなのはあくまで建前で、彼女と話してみたいというのが本音だ。


なんだか彼女は俺と似ているように見えた。

生きることに希望を持てないような、そんな雰囲気が。


もしかしたら、彼女にも何か悩みがあり、生きたいと思えなくなるほど苦しんでいるのかもしれない。


ただの傷の舐め合いだっていい。もし同じ境遇にあるなら話してみたかった。

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