春になったら君に会いたい

「確かにそうですね」

俺は心に浮かんだささいな不安感を隠すように笑ってみせた。


「でも、私も暇でしょうがなかったんです。よければ、いろんなおしゃべりしません?」

彼女の提案に頷く。暇で暇で仕方ないのは、同じ病院暮らしである俺にはよく分かった。


「えっと、じゃあ、まずは自己紹介から。俺はここの五つ隣の病室に入院してる森田冬です。年は今年で十七になります」

緊張して堅くなってしまったが、目を見て言えた。聞いていた彼女の顔が綻ぶ。


「私も十七歳なんです! 同い年だったんだぁ。じゃあ、こんなに堅くなる必要なかったですね」

「マジか。……それならタメ口でもいいかな。正直敬語使うのしんどくて」

「うん、もちろん! 私も敬語はちょっと苦手だから」


思ったより話してみると話しやすくて、スラスラと言葉が出ていった。人見知りな俺にそうさせるなんて、彼女は凄い力を持っているのかもしれない。


「あ、私も自己紹介しなくちゃ。ここに入院してる小咲のぞみです。よろしくね、冬くん!」

「えっ」

ついつい声が出てしまう。まさか急に名前呼びされるとは思っていなかったのだ。顔が赤くなってしまったのは、不慣れから来るものなのだろうか。

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