春になったら君に会いたい


「まあ、俺の体質について知らないんだからしょうがないけどなっ」

俺が明るめに言うと、正晴はふっと息を吐き、頭をガシガシと掻いた。

頭を掻くのはどうにもならないことがある時の正晴の癖だ。


俺が傷つけられたことへの怒りの矛先をどこへ向けたらいいか分からないのだろう。正晴は本当に優しいから、俺のために憤ってくれているのだ。

そうなると分かっていたから、言いたくはなかったんだけど。



「……ま、冬が気にしないならそれで良いんじゃない」

頭を掻いていた手を下ろして、しぶしぶといった感じで言う。俺のことを心配してくれているということがとても伝わってきてなんだか少しむず痒かった。



「随分と話し込んでたみたいだけど、のぞみちゃんとは仲良くなったの?」

「ああ。他愛ない話してたら結構時間たっちゃっててな」

のぞみのことを思い出しながら返事をする。

言われたくないことを言われたからといって、相手を苦手認識するような時期はもう過ぎている。しかも、今回の発言は、俺が自分の体質を隠しているからこそのものであり、のぞみに悪いところは一切なかった。



「また来てねって言われたから、今度また行こうと思う。お互い暇だしな」

俺がそう伝えると、正晴はちょっと安心したように表情を柔らかくした。

その理由はよく分からなかったが、正晴なりにいろいろと考えてくれているんだと思った。

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