春になったら君に会いたい



「うぁー、あっちぃ」

気づけばもう八月。気温は連日三十度を超えており、外を歩くだけで溶けそうに暑い。


今日はバイトが休みなので、図書館へ行ってきた。俺はあまり小説を読む方ではないが、正晴やのぞみから薦められている小説があるから、いくつか借りてみたのだ。


その後、ファミレスで昼飯を食い、今はのぞみの見舞いのために病院へ向かっている。ファミレスから病院までは歩いて二十分ほどだが、それでも暑さにやられそうだった。


病院内に入ると、クーラーの冷気が俺にくっついていた熱を吹き飛ばしていった。

受付で見舞いの旨を伝え、のぞみの病室へ向かう。

だが、病室への距離が近くなると、なぜか胸騒ぎがした。何か悪いことが起こる気がする。根拠のないその予感を無視することは、俺にはできなかった。


病室の前まで来て、一度深呼吸をした。やはり嫌な感じがする。少し怖かったが、それを振り払うように頬を一度叩き、ドアを開けた。

ガラガラという音に気づいたのぞみがバッと顔を上げる。その顔は妙に歪んでいて苦しそうだった。

俺は驚いて、すぐに彼女に駆け寄った。今まで泣いていたことを、頬についた涙のあとが語っていた。

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