春になったら君に会いたい


正晴の言いたいことの意味はよくわかった。むしろ、わからないはずがない。俺がずっと苦しんできたことなのだから。


「もちろんわかってる。俺がのぞみと会えるのはあと少しだけだってことだろ。俺は冬になったら寝ちゃうんだから。今が八月四日だから、あと四ヶ月ないくらいか。下手したらもっと短いかもしれないな」

俺は敢えてなんでもない風に答える。

当事者のいないところで、部外者が暗くなっていたって仕方がない。正晴がショックを受けている今、俺だけは明るくいるべきだろう。

……なんて、本当はどうしたらいいのかわからなくて取り繕ってるだけなのに。


「冬……」

やっぱりそれも正晴にはバレてしまっているようで、正晴はそう呟いて黙り込んだ。


俺も何を話すべきかわからなくなって、二人の間に沈黙が流れる。






「好き」

その沈黙を破ったのは、紛れもない俺自身の声だった。自分でも驚いて、ばっと口を塞ぐ。


「え、急に何?」

さっきまで暗い顔をしていた正晴もこれには驚いたようで、ポカンとした顔をしている。


「いや、なんでもない」

「えー、気になるんだけど」

「なんでもねーって!」

俺が恥ずかしさに声を少し荒らげると、正晴は意地悪な笑みを浮かべた。


「なんでもないって言い張るんなら、俺への愛の告白として受け取っちゃうよ」



正晴のそんな言葉のおかげで、俺は本当のことを話さざるをえなくなった。
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