HEROに花束を(完)

ざわざわざわ。


嫌な予感がして、わたしは呼吸を整えようと深呼吸をした。



「どう…して?」



これを聞いたら、もう引き戻せないような気がした。



恐ろしく過保護な悠の母親。


たまに悠が見せる悲しそうな表情。


『来年の春、また桜が咲いたら、俺、またこの桃色の花をみたい。』


あの日、悠が桜のベールに包まれて言った言葉。


『穂花、一緒に見てくれる?来年も、再来年も、ずっと、見てくれる?』


その時の悠の切なそうな顔を今でも忘れられない。


悠の笑顔が涙に変わって行くようで、怖くて怖くてたまらなくなる。



ーわたしは今から、何を聞かされるの?



想像もつかない悠の過去。


サッカーを辞めた理由。

美菜ちゃんと別れた理由。



ーわたしはまだ何も知らない

< 316 / 537 >

この作品をシェア

pagetop