鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)


ファイブカフェを出て、課長の隣を歩く。

社内の課長しか見たことないから、なんだか不思議。

そっと見上げると、課長と目が合った。

「なんだ?」

「フフ。課長と私の身長差って30センチくらいですかね?」

私の身長は152センチ。

ちんちくりんな私の隣を身長180センチの課長が歩いてる。

なんだか楽しい。

課長は私の歩幅に合わせて、ゆっくり歩いてくれる。

さりげなく車道側を歩いてくれる。

やっぱり課長はモテるんだろうな~と、改めて思いながら、ハッと我に返った。

楽しんでる場合じゃないよ。

やっぱりなにかミスでもしたのかな、私。

それともどこかに異動なのかな…。

ファイブカフェから徒歩5分ほどの、大通りから1本裏道に入ったところにある『杉菜(すぎさい)』は、和食中心で家庭的で温かみのあるお店として有名で、なかなか予約が取れないと人伝に聞いたことがあった。

大通りは高層オフィスビルが建ち並んでいるのに対して、奥まった所にひっそりと建っている『杉菜』は、京都の高級料亭のような外観で、社会人2年目の私がひとりでは入れそうにない特別な雰囲気のある場所だった。

課長がレディファーストと言わんばかりに、引き扉を開けてくれると、中から上品な女性が駆け寄ってきた。

「いらっしゃいませ。堂林さま」

着物の上に割烹着を着た女性が深々とお辞儀している。

つられて私もペコペコお辞儀したら、笑われてしまった。

恥ずかしい…。
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