桜樺 -ouka-
巡りゆく季節


私は彼の名前を泣きながら呼び、一心不乱に走った。





『総司!!』





池田屋の前では、土方さんが会津藩を前に、ドンと構えていた。多分、手柄を横取りされないように守っていたのだろう。






「おまっ瞳?!?!その髪…………上には行くな」






土方さんは私の髪色に驚いたが、すぐに複雑な表情になり、声を低くした。






『知ってるわよ。だから来たの』






「………」






納得した土方さんを見て、私は急いで2階へ上がった。





奥の襖。






総司、総司!!






総司の周りには、幹部のみんなが集まっていた。






「瞳………」





みんなも土方さん同様、私の髪色に驚いたが、すぐに暗い顔になり、うつむいた。







総司の手を握ると、言った。






『ごめん、みんな…私が、最後にできること……』






「瞳ちゃん?」






傷口に手を当てると、目を瞑り集中した。






ブウォン






すると、傷口から明るいピンクの光が飛び出し、それが桜の木を演じた。

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