美魔女オネェに拾われたなら
「さっちゃん、ほんとに行っちゃうの?」
私はそう、玄関で尋ねていた。
「言ったでしょ!明が所構わずイチャイチャするんだもの!私には目の毒だわ!」
とブーブー文句を言い、私と明さんも手伝って、さっちゃんのお引越しが完了してしまった。
その後で、いまさらに聞いた私も私だけれど…。
三人で仲良く暮らして来ただけに、寂しさが大きくなってしまったのだ。
とは言っても、さっちゃんの引っ越した先は元々借りてた徒歩二分の四つ程先のマンションなんだけど。
それでもしょっちゅう一緒いたのが居なくなるのが寂しくて、ギューッとさっちゃんに抱きつく。
「夏美、相手がサチでも妬けてくるから程々にして」
なんて言う明さんが居るので、この引越しはやっぱり仕方ないのかもしれない。
「ほらね、あたしにとっての夏美は娘のようなもんなのに。こんなオネェにまで嫉妬するアホの子よ?大丈夫?でも、こんなのもう夏美にしか頼めないからよろしくね。こんなんでも一応ビジネスパートナーだからね!」
とジト目で頬に手を当て、ため息混じりに明さんを見て言うさっちゃん。
「仕方ないだろ?夏美がどこまでも可愛いし。俺にとっての特別なんだから」
そこに真顔で返す明さん。
その言葉に赤面する私。
「あぁ、もう!ホントご馳走様!イチャイチャは帰ってから二人の家でやりなさーい!」
さっちゃんの叫びは、ごもっともだと思います…
「ん、じゃあ帰る。何かあれば言えよ?俺達ビジネスパートナーだし?」
私の肩を引き寄せて、ニヤッと笑う明さんに
「その前に腐れ縁でしょうが」
そう返すさっちゃん。
「そうだな…、保育園からの知り合いなんて腐れ縁だろうな」
その言葉に
「そんなに前から二人は知り合いだったの?!」
「そうだ」
「そうよ」
が重なる。
「だからホントに仕事でもよくツーカーだった訳だね。なんだかんだ仲良いんだね、二人とも!」
クスッと笑うと
「それは...、否定しない」
にがり切った表情まで揃ってるとか、ホント仲良し。
「さっちゃん、たまには来てね!またご飯一緒に食べようね?」
「当たり前よ!だってあたし料理出来ないもの」
どーだって顔で言ってるけど、さっちゃんそれは自慢にならないからね?
「うん、分かってる!」
そうしてさっちゃんは宣言した週のお休みに同居を解消して引っ越しました。