この世界は7で終わる
時折吹く風に、湖全体が揺らぐ。その数秒の揺らぎがより一層、私達を感動させた。キラキラと、水面の空が眩しい。
「アトリ、今日はここで一泊しよう」
それなのに、ルカの言葉に私の本心は陰っていく。まだ今日は10キロも歩いていない、まだ先へ行けるというのにルカがそれを言うのかと。
「でも、」
「こんな絶景、なかなか拝めないだろ?ーー・・だから、今日はここにいたい」
今日の、あと数時間を足を止めて過ごすことに抵抗があった。
確かに綺麗だ。感動も覚える程に。でも、この先に在り得るモノゴトだってある。その可能性を捨てて、目の前のことばかりに執着はしたくなかった。
「アトリ」
「本当に、今日はここでいいの?」
「うん。ここがいい」
時間が停止した、それを体感させる程の光景を前に。現実とのギャップにやられそうになる。正直、あまり長居はしたくなかった。
それでもルカは大層気に入ったみたいに、「凄ぇなー」と目を輝かせるもんだから。結局は私が折れるしかない。
ーーー・・私とルカ、そして塩湖と若木。
ここが最果てというのなら納得出来る。語らぬ自然が人を受け入れていた。