この世界は7で終わる





若者達へ。




すまないね、見送りが出来なくて。私は先に行かなければならない。なぁに、60年生きた。自分の歩んできた道に後悔はないんだ。しかし、妻を一人で逝かせてしまった事には多少なりとも悔いはあるがね。それでも良い人生だったと誇れるさ。



そして少し早いが、結婚おめでとう。まさかもう終わりを迎えると覚悟していた時に、君達のような若者に会えるとは思ってもみなかった。最後の最後に神様がわたしにくれた贈り物だ。とても楽しかった。アトリちゃん、美味しい紅茶をありがとう。ルカくん、君は男として申し分ない。アトリちゃんを幸せにしてあげなさい。


だから、君たちの幸福を見届けてやれない代わりに、この指輪をせめてもの祝いとして贈らせてほしい。わたしと妻の物だ。きっとわたしが持っていくよりも君たちの幸せの糧になるのなら妻も喜ぶ。どうか受け取ってほしい。

この指輪はただの指輪だ。決してわたし達の人生と重ねて重く感じる必要はない。残酷や理不尽に思う仕打ちでも、感じる心は全て違うのだから。皆同じ形で最後を迎えようと、それまでに辿った道筋も感情も人それぞれだ。君達がわたし達の終わりに感化されて引きずられる必要はない。らしくありなさい。そうすれば悲しみだけじゃない筈だ。わたしは少なくともそうだった。



長くなったね。最後になるが、本当に君達に出会えて良かった。少しこの世に縋りつきたくなったよ。もう少し生きたいとも思った。願うだけならタダだからね、許してほしい。でもこれで妻と共にいれると思えば、この運命も受け入れられる。こんな老いぼれの話し相手になってくれてありがとう。


君達の旅路の果てに幸多からん事を。




ヤコフ・サンラエム



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