ナンパ霊
「お姉さん、もし良ければ、おれといっしょに、三途の川沿いを散歩しに行きませんか?」
「ちょって待てよ!守護霊ナンパされて、連れていかれたら、おれはどうなるんだよ?」
「あ?知らねーよそんなの」
「おま、ふざけんなよてめえ!」


おれは弟を殴ってナンパを阻止しようとしたが、例によってスケスケなので、拳が当たらない。弟は、それを無視して、おれの守護霊を口説きつづけている。


やばい。守護霊を連れていかれたら、本当におれ、どうなってしまうんだ?


「え?」
突然、弟の表情がくもった。
「・・・・・・?」
「あ、お姉さん、そうだったんですか?・・・・・・はあ、じゃあ、その胸は・・・・・・手術?・・・・・・ああ、そうなんですね」
「・・・・・・どうしたんだよ」
弟は、なんともいえない微妙な表情になって、言った。
「兄ちゃんの守護霊、オカマなんだって」
「・・・・・・は?」
「そんなわけで、おれあの世に戻るわ。でもすげえなあ、最近のメイク技術って、本物の女性にしか見えないよ。・・・・・・・・あ、でもよく見たら、ヒゲの剃り残しがうっすらと」


そう言い残して、弟は成仏していった。

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