千の春





iPodの電源を入れる。
リストだ。
今、猛烈にリストが聞きたい。

愛の夢が流れる。
まどろみながら流れる柔らかい音色を聴いた。

千春と弾いたなぁ、と岬は思った。
最近、千春のことをよく思い出す。
岬の演奏は、理想にはまだまだ遠い。
千春のような熱を感じる演奏を。
人を惹きつける演奏を。

そればかりを考え、目指して弾いてきた。

いつか、たどり着けるのだろうか。
先の先。
ずっと先。

私が死ぬまでに、理想のピアノを弾けるように。
岬は重い瞼とまとまらない思考の中で、リストを聞き続けた。








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