神様の隣で、君が笑った。
 


「なのちゃん、今から帰り?」


さすが、中学生のときは野球少年だっただけある。

少し走ったくらいでは息も切らさない。

リュージくんは白い歯を見せて笑うと、右手をズボンのポケットの中に入れた。


「うん。朝陽がグループワークで忙しいから、しばらくは一人で帰るの」


第三音楽室に行こうとしていたことは、言えない。

もしもリュージくんに話して、私が一人であの場所にいることを朝陽に知られたら……。朝陽はきっと、私を気にしてしまうだろう。


「あー……うん。朝陽から、聞いたよ。ほんと、グループワークの授業、厄介でさ。特に朝陽は先生に推薦されてリーダーもやってるから、余計にやることも多いんだ」

「そうなんだ……」


朝陽がリーダーを任されていることまでは、知らなかった。

だけど優秀な朝陽のことだから、みんなから信頼されて、みんなをまとめるリーダーに推薦されたとしても違和感はない。

……やっぱり、音楽室に行こうとしていることを、言わなくて良かった。

朝陽にこれ以上、余計な負担をかけるわけにはいかないから。

 
< 119 / 319 >

この作品をシェア

pagetop