神様の隣で、君が笑った。
 



「もう、菜乃花! 食パンが焦げる前にトースター止めてねって言ったじゃない!」


朝、学校へ向かう準備をしていた私の耳に、お母さんのヒステリックな声が刺さった。


「ああ……、二枚とも焦げちゃってる! 勿体無い……朝から嫌な気持ちにさせないでよ」


お母さんはトースターの中から真っ黒になった食パンを取り出した。

確かについさっき、お母さんに『今、食パン焼いてるから、見ててね』と言われたのだ。

だけどスッカリ忘れていた私は焦げ臭い匂いがリビングに漂ってきて、お母さんに叱られるまでそのことに気付けなかった。


「はぁ……食パン、また焼き直ししなきゃ」

「……ごめんなさい」


私が素直に謝ると、お母さんはバツの悪い顔をしてから食パンをゴミ箱へと投げ入れた。

……お母さんは、私がADHDと診断されてからも未だに、心のどこかでそれを受け入れられずにいる。

時々、『どうしてできないの』、『なんでできないの』と今のようにヒステリックを起こして、私を叱りつけるのだ。

だけど私が素直に謝ると、"やってしまった"という顔をしてから目を逸らす。

 
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