神様の隣で、君が笑った。
 




「……菜乃花、遅い。朝からボーッとしてんなよ」


陸斗くんの前で号泣するという恥ずかしい事件を起こした翌日。思いもよらないことが起きた。

朝、いつも通りに学校に着き、下駄箱で上履きに履き換えていると聞き慣れた声に名前を呼ばれた。

恐る恐る顔を上げれば、案の定、陸斗くんが立っている。

私は驚きと昨日の出来事からくる恥ずかしさも相まって、思わず唖然として固まった。


「なんだよ、その面白い顔」


陸斗くんが訝しげに眉根を寄せる。

面白い顔って朝から失礼な、と心の中で反論してみたものの、声にはならない。


「ほら、行くぞ」


そんな私の心情を知ってか知らずか、陸斗くんは固まっている私の前まで歩いてきた。

そうして何故か、ぶっきらぼうに右手を差し出す。


「え……え?」


思わず彼の手と顔を交互に見れば、何故か舌打ちを返された。

 
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