ミンジュンが私を溺愛すぎる件




ミンジュンは缶ビールを飲んでいる。
飲み干した空き缶が二つ転がっているから、もうこれで三本目だ。


「ミンジュンさん…? 何かあったんですか?」


詠美がミンジュンの隣に座ると、ミンジュンは缶ビールを持ったまま詠美を抱きしめた。


「今日、スタッフを二人解雇した。
俺の会社なんだから、俺が決める事に誰も文句は言わせない」


詠美は胸が痛んだ。
今回はミンジュンは何に腹を立てたのだろう…?


「ジノさんは…?」


「俺にはジノさえいればいいと思ってるのに、あいつはもう俺の面倒は見切れないだってさ」


詠美は無意識にミンジュンをきつく抱きしめた。
この人は何か大きな傷を心に負っているのかもしれないと、ふとそんな風に思ったから。


「ミンジュンさんは、どうして他人にそんなに厳しいんですか…?」


ミンジュンはまだ詠美の胸の中に顔をうずめたままだ。
何だか心がふわっと軽くなっていくのが分かる。


「他人に厳しいんじゃなくて、信用してない。
鼻っから信用してない人間が、ミスをしたらもうダメだろ?」


「人間ってミスをする生き物なのに…」


詠美はミンジュンの髪を撫でる。


「そんなの分かってるよ。
でも、小さい時から、身に付いた癖はもう直しようがないんだ」




< 89 / 212 >

この作品をシェア

pagetop