日だまりの雨
「雨音~?」



「……えっ?」




気が付けば、あの頃ずっと憧れていた笑顔が真横で小さく唇を尖らせていた。




「一人で思い出に浸ってた?」



「……うん。ごめんね」




困ったように笑って日咲に謝れば、すぐさま顔はいつもの笑顔に戻った。




無防備で明るいこの笑顔に触れたい……いつだってそう思っている。





「どんな思い出っ?」



俺のそんな感情を知るはずもなく、日咲は相変わらず笑顔を携えたまま尋ねてくる。




もう一つの思い出。





いつだって暗闇から俺を引き戻してくれた人の……小さく細い手。




あの頃、小さな俺の世界で一番大きな存在だった。




茜(あかね)……。




未だに、キミの存在にすがってしまう。



もう居ないキミを求めてしまう。





またキミに、暗いって笑われるだろうな。
こんな弱いところを見せたりしたら……。




そんなことを思いながら、自嘲するように小さく笑った。




「……これ、大好きだった人に貰った」




何気なく呟いた俺に向けていた日咲の瞳が一瞬見開く。
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