契約書は婚姻届
「おーい、6番と9番、だれー?」

「あ、……6番、俺」

おずおずと申し出たのはひとつ年上の雪也だった。
ごつい、いかにもゴリラな副部長じゃなかったことにハードルは下がったが、それでも一メートルが九十センチに下がった程度。

いつまでも名乗りでない9番に、犯人探しのように皆が探し始める。
プレッシャーに耐えかねてとうとう、朋香はおそるおそる手を挙げた。

「9番、私、……です」

あっという間に雪也の隣に行かされ、ちゅーだキスだとはやし立てられる。

「ごめんね。
これも、ゲームだから」

雪也に謝られたと思ったら、ちゅっと唇に柔らかいものがふれ、目を閉じる暇もなかった。

……これが私のファーストキス。

自覚すると涙がじわじわ浮かんでくる。
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