契約書は婚姻届
こんなところで泣いては場をしらけさせるだけだと、必死で我慢した。

「あの、すみません。
ちょっとお手洗い」

逃げるようにその場をあとにする。
人気のないところに来ると、膝を抱えてうずくまった。

こんなことで泣いてるなんて、自分はどれだけ子供なんだろうと思う。

ファーストキスは好きな人とロマンチックに。

そんな、乙女みたいに夢見て後生大事に取ってた結果が、これだ。

「バカみたい」

「なにが?」

突然聞こえた声に驚いた。
顔を上げると雪也が困ったように笑っている。

「どうかしたんですか?」

気づかれないように、涙を拭って立ち上がる。
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