契約書は婚姻届
「朋香?
なに考えてるの?」

ちゅっ、尚一郎から落とされる口づけ。
それは決して嫌なものじゃなく、最近は心地いいとさえ感じる。

「なんでもないですよ」

慌てて笑って取り繕った。
浮気じゃないと自分では思っているが、やはり雪也のことを考えていたのはなんとなく後ろめたい。

「そう?
なにか足りないものとか欲しいものとかない?」

「ないですよ」

毎日の尚一郎のプレゼントに、あっという間に衣装部屋は一杯になってしまった。
それなのに尚一郎はさらに買おうとする。

……自分の愛情を示すかのように。

この結婚が尚一郎が自分を手に入れたいがための契約結婚だというのはもう、自覚している。
でも、どうしてそこまで尚一郎に愛されているのかわからない。
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