契約書は婚姻届
理由がわからず受ける愛情はなんとなく居心地が悪い。

「僕は朋香にもっとおねだりして欲しいんだけどな」

「……はあ」

ちゅっ、ちゅっ、落ち続ける口づけ。

……どうして私は、尚一郎さんにこんなに溺愛されてるんだろう。

朋香は不思議でしょうがない。


 
納車まで結局、ひと月ほどかかった。
オプション装備どころか、尚一郎はかなりのカスタムオーダーしたらしい。

それまでの間はほかの車を使ってもいいし、あれならハイヤーを使うといいよと提案してくれた。

お金も、ヴィトンのピンクの財布に現金五万円とブラックカードを入れて渡してくれた。

……十万円入れようとした尚一郎とは、揉めたが。

けれど、野々村にハイヤーを呼んでもらうように頼めばいいことだとわかっていても、なんとなく頼みにくい。
あと僅かの辛抱だと、朋香は我慢していた。
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