契約書は婚姻届
「ええ、なにかあったら、ね」

雪也は目が合うと、朋香に向かってにっこりと笑った。
尚一郎も笑っているが、どことなく作り笑いめいている。


「朋香にプレゼントしていいのは僕だけだっていうの」

「は?」

尚一郎がなにを云っているのか理解できない。

リビングに戻るとあっという間に付けられていたキーホルダーを外し、尚一郎は野々村を呼んだ。

「処分しといて」

「えっ、ちょっと!」

渡されたキーホルダーを手に、下がろうとしていた野々村を慌てて止める。

「処分することないじゃないですか!
折角もらったのに」

「なに?
朋香はあいつがくれたものが欲しいの?」
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