契約書は婚姻届
「では、キーをお渡しします」

納車の日。

雪也がテーブルの上に載せたキーにはすでに、猫のキーホルダーが付けてあった。

「……これは?」

不快そうに尚一郎の片眉が上がる。

けれど、雪也は気づいてないふりなのかにっこりと営業スマイルを浮かべた。

「私から奥様へ、ささやかなプレゼントです」

「ああ、そう」

まるで挑発に乗るかのように、尚一郎が唇を歪ませる。
そんなやりとりを見ながら、当事者である朋香はなにが起こっているのかわかってなかった。

なぜなら、尚一郎が買い物をするとき、サービスだとかプレゼントだとか、なにかとオマケされるのが普通だったから。

今回も、その類だと思っていたのだ。

「このたびはお買い上げ、誠にありがとうございました。
なにかありましたら、いつでもご連絡ください」
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