契約書は婚姻届
翌々日、明夫と西井、そして明夫の右腕で技術部長の有森泰行とともに朋香が再びオシベメディテックを訪れると、社長室に通された。

「今日はわざわざご足労いただき、ありがとうございます」

「いえ……」

どんな無理難題を云ってこられるのかと戦々恐々としている三人の顔色は悪い。

反対にその前に座る押部社長は、尚一郎という名前が不似合いなくらい、外国人の風貌をしていた。

まるでタンポポのような明るい金髪、春の野原のような碧の瞳。
そしてそれらの優しいイメージを一掃するかのような、冷たい銀縁の眼鏡。

「そう恐縮ならさずに。
気楽に行きましょう?」

「はあ……」

押部は楽しそうに笑っているが、明夫たちは生きた心地はしないだろう。
死に神から喉元に鎌を突きつけられているにも等しい状況なのだから。
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