契約書は婚姻届
それを読み進めるにつれて明夫の顔は青く白くなっていき、紙を握る手は小刻みにぶるぶると震え始める。

「とりあえず一度、話し合いの上とはなってますが。
これは事実上の打ち切り通告です」

「そ、そんな。
だってこのあいだ、川澄部長は」

「騙されたんですよ。
オシベのやりそうなことです」

がっくりとうなだれてしまった明夫の頭髪が、急に淋しくなった気がした。
朋香がこのあいだ感じていた不安は、気のせいではなかったのだ。

「どうします?
値下げ交渉は一応してくるでしょうが、こっちとしては応じられない金額でしょうね」

「……そうだな」

父の工場が潰れる。
そんな危機なのになにもできない自分を悔しく、夜遅くまで続いた幹部会議をただ朋香は見ていることしかできなかった。
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