契約書は婚姻届
「ぜーったい、これはあいつの個人的なプレゼントだって!
なに、朋香はそんなにこれが欲しいの!?」

さっきから、尚一郎は子供のように怒っている。

もしかしてこれは、……嫉妬してるんだろうか。

そう気づくと、なんだか朋香は面倒になってきた。

「……はぁーっ。
わかりましたよ、それは使いません。
ただ、処分するのはもったいないので、誰か欲しい人にあげてください。
……これでいいですか?」

ぎろり、思いっきり睨みつけると、尚一郎は怯えたようにびくんと背中を震わせた。

「う、うん。
それでいいよ」

……私はなんて、面倒な人に好かれてしまったのだろう。
それでなくても家のことだけでも面倒なのに。

はぁーっ、深いため息を朋香が落とした理由に、尚一郎は気づいていない。
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