契約書は婚姻届
「朋香ちゃん。
こんなむちゃくちゃな条件、聞くことないから。
おじさんたちはおじさんたちでなんとかする」

「有森さん……」

有森とは朋香が生まれる前から家族ぐるみのつきあいだった。
もちろん、朋香も小さい頃から可愛がってもらっている。

父ですらまだ動揺している中、普段は口少ない有森からの言葉に、朋香は少しだけ冷静になった。

……私がこの男と結婚しなければ、有森さんたちは大変なことになる。

なんとかするといったって、開発一筋で人付き合いが苦手な有森に、すぐ次の就職先が見つかるとも思えない。
自分だってなかなか決まらずに、父の手伝いをしているくらいだ。

工場のおじさん、おばさんにはたくさんお世話になった。

去年入社した田中くんは彼女に赤ちゃんができて、結婚するんだと云っていた。

私がこの男と結婚さえすれば、全てが丸く収まる。
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