契約書は婚姻届
「崇之に怒られた……。
仕事、放り出してきたから……」

崇之というのは秘書の犬飼のことだ。

仕事中に突然、社長が姿を消せばさぞかし犬飼は慌てたことだろう。
短期間とはいえ社長である明夫の秘書をしていた朋香としては、その心中を察し、犬飼に同情していた。

「尚一郎の会社って、社長が怠けててもやっていけるのねー。
うらやましいわー」
 
挑発するかのように見下す侑岐に、尚一郎のなにかがぶちっと切れた音がした気がした。

「それもこれも侑岐が朋香を勝手に連れ出したりするからだろ!
買い物だろうがなんだろうが、君ごときが朋香とともにするなんて、許されるとでも思っているのかい!?
Tomoka alles meins! 」

「ふーん、『朋香は僕だけのもの』ねー」

がるるるっ、侑岐から遠ざけるかのように朋香を抱きしめ、まるで犬みたいに尚一郎は威嚇しているが。

「あのー、おふたりとも」
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