契約書は婚姻届
第11話 Kaffee trinken
いつものように長い竹林を抜けると、車は右に曲がり、竹林に沿って進んでいく。

「あのー、尚一郎さん?
高橋さん、道、間違えてるんじゃ……?」

達之助の暮らす本邸は、竹林を抜けて真っ直ぐだ。
けれど車は本邸を左に走っている。

「いいんだよ。
今日、僕を呼んだのはCOOだから」

困ったように笑う尚一郎の手を、思わずぎゅっと掴んでいた。
指を絡めて握り返されると、少しだけ安心できる。

……昨晩。
あれから、尚一郎が教えてくれた。
帰りに本邸に寄って、例の書類を渡したこと。
当然、尚一郎は中に入れないから、入り口で押部家付きの秘書に。

だから、きっとその件で呼び出しだろうと笑っていた。

 
着いたところは尚一郎の屋敷と同じくらいの大きさの、洋風の屋敷だった。

正面玄関で車を降り、そこから入る。
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