契約書は婚姻届
「二年のクラス替えで崇之とは一緒になったんだ。
最近、急成長してきた薬剤会社の息子が崇之だったんだ。
成り上がりって周りからは蔑まれてたけど、崇之自身、あまりそういうのを気に留めなかったからね。
僕と違った意味で浮いてたよ」

ふふふっ、おかしそうに尚一郎が笑う。
もしかしたらその当時を思い出しているのかもしれない。

「班とか作るとさ、必ず崇之が余るんだ。
みんな悪意を持ってやってるのに、崇之は全然、気にしてない。
それがおかしくてさ。
気付いたら話しかけるようになってた。
最初は邪険にされたけど、しつこく話しかけてたら仲良くしてくれるようになったよ」

「それは……。
犬飼さん、大変だったでしょうね」

たぶん、犬飼はわんこモード全開で迫ってくる尚一郎に、邪険にできなくなったんじゃないだろうか。
そんなことが容易に想像できた。

「どうなんだろうね。
でも、そのうち、家に遊びに行くくらいに仲良くなっていたよ。
それで、妹の万理奈とも知り合った。
万理奈にも崇之にも、好きでもないのに髪と瞳の色を変えるとか莫迦じゃないのかって呆れられたね。
それでなんか、無理して好かれようとしてる自分が急に莫迦莫迦しくなってやめたんだ」
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