契約書は婚姻届
「私ひとりの問題じゃないんだ……」

尚一郎との愛を貫いて、自分ひとりが不幸になるのなら自業自得でまだ諦めもつくかもしれない。

それに、尚一郎は何度も、朋香を守ると誓ってくれた。

けれど、達之助の認めない尚一郎との結婚生活を続ければ、明夫の工場がまた倒産の危機に立たされるどころか、家族まで失いかねない。

「結局、尚一郎さんとの結婚は、諸刃の剣だった、ってことだよね……」

尚一郎と結婚することで、工場は守れた上に融資まで受けられた。
しかしこの結婚は達之助の不評を買っている。

「でも、いまさらこんな話をされたって、……引き返せない」

顔をうずめた枕が、こぼれ落ちる涙を吸い取っていく。

万理奈の気持ちが痛いほどわかった。

ずっと、これは契約結婚なんだからと尚一郎なんて好きにならなければよかった。
いまさら、尚一郎と別れるなんてできない。
それほどまでに尚一郎を深く愛していた。
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