契約書は婚姻届
けれど、そうしなければ今度は家族を失うことになる。
もう二度と、事故で和子を失ったときと同じ思いをするのは嫌だ。

身も心もバラバラになってしまいそうで、ひたすら苦しい。

「どうしたらいいのかなんて、わかん、ないっ……」
 
嗚咽は、枕に消えていく。
ただ、尚一郎と幸せになりたいだけなのに、なんでできないんだろう。

 
コンコンコン、不意にノックの音が聞こえた気がして、嗚咽が途切れる。

「朋香?
……入ってもいいかい?」

すぐに、おずおずと窺うように尚一郎の声が聞こえてきた。

思いっきり尚一郎に抱きしめてもらいたい。

けれどそんなことをすればますます引き返せなくなれそうで、返事ができない。

「朋香?
入るよ」
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