契約書は婚姻届
侑岐は隣の椅子に座り直すと、皿の上のブルーベリーを摘んで朋香に差し出してくる。

「あーん」

「え、えっと……」

「ほら朋香、口開けて。
あーん」

困惑気味の朋香にかまうことなく、にっこりと笑って侑岐はブルーベリーを差し出してくる。
渋々口を開けると朋香は、そのブルーベリーを口に入れてもらった。

「あのー、さっき、野々村って」

ただの同姓だといわれればそうかもしれないが、執事の男は年齢的にはちょうど、野々村の息子くらいだ。

「ああ、彼、尚一郎のところの、野々村の息子なのよ。
それで、尚恭おじさまの異母弟。
……あーん」

「あー……って!
はいっ!?」

「朋香ー、しっかり食べなきゃ。
前々からちょっと細いとは思ってたけど、ここしばらくでさらに細くなってるんだから。
ちゃんと食べないと抱き心地が悪いって、尚一郎に嫌われちゃうわよ?」
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