契約書は婚姻届
和子の死後、大事にはしていたが、ほとんどが汚れたりして処分してしまった。
それが、こんな形で残っていたなんて。

「尚一郎さん、ありがとうございます。
これ、母の形見なんです」

「お礼をいうのは僕の方だよ。
あのとき、僕を叱ってくれてありがとう。
怒りで我を忘れそうになったときは、朋香の顔を思い浮かべたら落ち着くことができた。
それに再会して、結婚まで。
感謝してもし尽くせないよ」

「尚一郎さん……」

ちゅっ、口付けすると嬉しそうに尚一郎がふふっと笑った。
朋香もつられてふふふと笑う。

「僕はいま、世界で一番幸せだよ。
朋香は?」

「私もいま、世界で一番幸せです」

重なる唇に、これ以上の幸せはないと思った。

……そう、これ以上の幸せはなかったのだ。
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