契約書は婚姻届
「思い出したかい?」

「……なんとなく」

やはり、はっきりとは思い出せない。
あれが尚一郎だったと云われれば、そうな気もする。

「あのときもらったハンカチは、いまでも大事に持ってるんだよ」

ベッドを降りた尚一郎がごそごそと荷物を漁ると、何かを手に戻ってくる。
渡されたそれはハンカチだった。

「これ……」

あの当時、和子の趣味は刺繍で、いろいろなものに刺繍を入れていた。

ハンカチも例外じゃない。

そのハンカチには確かに、朋香のリクエストで和子が刺してくれた、うさぎの刺繍が入っていた。

「お母さん……」

和子に、再会できた気持ちになった。
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