契約書は婚姻届
ダン!

結婚指環と婚約指環を机の上に叩きつけると尚一郎は顔色ひとつ変えなかった。
ますます腹が立ってきて、ふん! と鼻を鳴らすとスーツケースを引きずって屋敷を出ていく。
しばらく黙って歩いていたが、次第に涙がこぼれてくる。

「嘘つき」

最初は嫌々はじめた契約結婚生活だが、いつの間にか尚一郎が好きなっていた。

「嘘つき」

絶対に守ると云ってくれた。
絶対に不幸にしないと誓ってくれた。

「嘘つき」

淋しそうな尚一郎とずっと一緒にいると誓ったのだ。
尚一郎だって絶対にひとりにしないと誓ってくれた。

「嘘つき」

何度も、何度も、愛してると云ってくれた。
ずっと、永遠に愛してると云ってくれた。
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