契約書は婚姻届
自分が好きになった尚一郎はこんな男だったのだろうか。

置いてあったペンを乱暴に取ると、中身も確認しないままサインをしていく。

「これで気が済みましたか」

「ああ。
さっさと屋敷を出ていってくれないか」

「云われなくても!」

勢いよくドアを開けて出ると、階段を駆け上がって自分の部屋に行った。

ずっとしまいっぱなしだった実家から持ってきたスーツケースを引っ張り出すと、同じく実家から持ってきたものだけを詰めていく。

嫌みのように尚一郎から買ってもらったものはすべて、そのままにしておいた。

荷造りが終わり思い出したことがあって書斎に戻ると、まだ尚一郎はそこにいた。

「これ!
お返しするの忘れてました!」
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