契約書は婚姻届
「すぐには無理だ。
時間をかけて準備しなければ。
けど、万理奈をあんな風にした奴を許しておけない。
協力してくれないか」

もちろん、すぐに承知した。
それが目的で尚一郎との仲など修復もしたくもない。


しばらく一緒に過ごすうちに尚一郎が昔と違い、周囲の人間に冷たいことに気づいた。
しかもあんなに万理奈の前ではよく笑っていたのに、いまは冷笑か皮肉った笑いしかみない。

「ああ。
僕は万理奈を不幸にしただろ?
もう楽しいとか嬉しいとかそういう感情はいらない。
……許されない」

思い詰めた表情の尚一郎にいい気味だとは思えなかった。

いまの尚一郎をみて万理奈は喜ぶのだろうか。
きっと万理奈なら、復讐なんてやめてもっと幸せになれと云うはずだ。


それからはずっと傍らで、達之助への復讐を願いながら、同時に尚一郎の幸せを願っていた。
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