彼の友達
すっかりご馳走になってしまって、21時を過ぎていた。
「ちょっと、しい送ってくるっす。」

パダに、家まで送ってもらうことになった。
「しっかり、捕まってろよー。」

パダは、鼻歌を歌っている。

「しい、お互い、がんばろうな。」
信号待ちの時、背を向けたまま、パダは言った。

団地に着いた。パダは、すぐに店に戻った。

22時に間に合った。
それなのに、親の顔は険しい。

「しい。あの男と一緒じゃなかったんだな。」
父親が言った。

「さっき、バイクを取りに来たよ。お前が一緒じゃなくて、心配した。あと5分帰りが遅かったら、警察に連絡していた。」

こんな時に不謹慎だけど、私は、バイクが下に置いてあることを、忘れていた。
ヒヤクとパダの話が楽しくて、ロクのことはすっかり、忘れていた。

「挨拶の仕方も、知らないんだな。大きな音を立てて、帰っていったよ。夜中に、近所迷惑な…。

母は、下を向いて黙っていた。

「あんなチンピラみたいなやつと、一緒にいるのは、本当にお前のしたいことか?お前は、来年は大学生になるんだ。」

「身の丈にあった恋愛をしなさい。」

父は冷たく言い放った。

うちは決して裕福なほうではない。私の4年間と引き換えに、母は親戚に借金をした。
私は、指定校推薦で、大学を受験させて貰った。
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