彼の友達
事件
父にガツンと言われて、ロクは、家には来なくなった。

たまに、パダから電話がかかってきた。
あまり長電話をすると怒られるのですぐに切った。
大学に入ったらバイトして携帯を買おうと決意した。

その頃の私は、だいぶ垢抜けた服装になっていて、イトーヨーカドーの服はもう着なくなっていた。
フリルのついた紺色のブラウス、チェックのボトム、黒い厚底ブーツ。パンクっぽいファッションを好むようになっていた。

パダの買い物に、よく付き合った。その時に、彼女だと勘違いされることも多かった。

側から見て、そう思われることが、誇らしかった。
ロクとは、まだちゃんと別れてはいなかった。

「俺、一人暮らししたいんだよね。」

パダの家は父親がいなくて、母親と年子の兄と、高校生の弟と、小学生の妹が住んでいた。

「しいの夢って何なの?」

私は、思い切って、言った。

「へぇ…。」
「すごいな。」
「いいじゃん。叶えるように頑張れよ。」

夢を話しても、笑われなかった。
それどころか、すごいって言って貰えた。
励まされた。
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