君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 私達は、一旦マンションへ戻った。

 礼門の部屋は、窓ガラスが割れていて、危険な為、必要な荷物だけを持って、一旦私が使っている方の部屋で一晩過ごす事になった。

「これからの事だけど……」

 礼門が切り出した。

「僕は、早急に、祖母に替わって黄金川財閥当主を継がなくてはならなくなった」

 真面目くさってそう言ったものの、礼門の態度はあっけらかんとしたものだった。

「……っていっても、実際のところ、今だって、業務のほとんどは僕がやっていて、祖母はまあ、『いるだけ』ではあったから、大きく何かが変わるってわけではないんだけどね、あー、もしかしたら大学は休学するかも、いろいろ落ち着くまで」

「けど、僕は全く祖母を疑っていなかった。元からあういう人なんだと思い込んでいた、……今回は、偶然本人がボロを出してくれたわけだけど、もし、気づかないまま、姉さんを排除にかかられていたらと思うとゾッとするね」

 思い返す礼門の表情は複雑そうだった。

「あ、あと、今までと変わらないって事は、本宅の方ではなくて、こっちのマンションの方が、日常生活には便利って事」

 にんまり、と、礼門が笑う。

「てなわけで、しばらくこっちの部屋で三人暮らしって事で♪」

「そう簡単に、ふたりきりになんてさせないからね!」

 立て続けにそう言うと私達からの反論を避けるように、荷物をまとめてくるから! と、言いおいて、元の部屋へ戻って行った。

 後には、私と征治さんが残された。
 
「えーっと……」

 礼門、ふたりきりにしないと言いながら、いきなりふたりきりなんだけど……と、私は思いながら、私は征治さんにかける言葉を探していた。
 
「素子さん、あの」

 私が言うよりも先に、征治さんが口を開いた。

「素子さんに先に言わせてしまいましたが……、私は、いや、俺は、あなたが好きです。……ずっと、好きでした」

 征治さんの『ずっと』という言葉に、私は少しだけ違和感を感じた。少なくとも、私と征治さんは、出会ってそう何日も経過していないはず。

 考えている様子の私を察したのか、征治さんが言葉を続けた。

「もしかしたら、これを言うと、素子さんが引いてしまうかもしれないと思って、言えなかったんですが……、俺は、時折素子さんの護衛についていたんです。……先代の、ご指示で。これは、奥様もご存知でした」
< 66 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop